タイトルに記載されている「年俸価値」というのは、選手の実力に見合った年俸である。とはいえ、以下の内容は、決して選手の年俸を推測するものではなく、その選手がどのくらいの年俸を受け取るべきかを評価するためのものである。
なぜ、それをするのか?
NBAファンであれば、NBA団体交渉協約というものを聞いたことがあると思いますが、そのおかげで、NBAの各チームの選手サラリー総額は原則としてサラリーキャップを超えることはできません(実際には、さまざまな例外規定によって超えることができます)。
つまり、NBAの各チームにはおおよその選手人件費があり、無制限にスター選手を集まって優位に立つことはできません。 このシステムで優勝するためには、チームはより良い選手とできるだけ少ない金額で契約しなければならない。 そのため、選手のオン・ザ・コートでのパフォーマンスが、年俸に換算してどれだけの価値があるかを評価することは、非常に重要なテーマです。
Bリーグでは、サラリーキャップ制度がありません。大手企業のスポンサーを持つA東京のようなチームは、選手の年俸総額が年間10億円近くになり、オールスターチームでも作られる十分な額になります。 しかし、島根のように予算が限られているチームもあり、19-20年シーズンのトップチーム人件費は約2億円しかありません。 限られた予算の中で良い選手と契約するのはGMの腕が非常に試される時です。
例えば、実際に試合で5,000万円の価値を生み出せる選手で、市場での注目度が低い場合は、2,000万円だけで契約できるかもしれません。 そのような選手と契約することで、当然でチームは期待以上の成績が取られるようになります。
そのためにはまず、選手の「年俸価値」をどのように評価するかを知る必要があります。
お金とバスケをどう結びつけるか?
いきなりと言えば、お金とバスケットボールがどういう関係があるのはイメージがあまり想像できないかもしれません。しかし、プロバスケットチームと言えば、バスケ試合を商品としてファンの皆様へ売ているじゃないですか。プロバスケットチームが選手に給料を支払いのは何の目的を持っていますか?ファンの皆様がどのような商品(試合)を期待しているのか?それは勝利です。
選手の人件費は勝利のコストです。Bリーグで、一試合の勝利をどれくらいお金がかかりますか?クラブ決算概要を公表した19-20シーズンを例として、当シーズンの18チームは合計72.6億円のトップチーム人件費を支払いました。コロナの影響で、そのシーズンでは各チーム約40-41試合を行ったり、合計365勝が発生しました。つまり、一試合の勝利で平均約2000万円のコストになります。
しかし、この2,000万円を、その後の計算で勝利のためのコストとして直接考慮することはまだできません。まずは、トップチーム人件費というのは、すべて選手の人件費ではなく、コーチ、トレイナー、アナリスト、マネージャーなどチームスタッフの給料も含めています。その部分が公表していないし、Bリーグ関係者ではない私がチームスタッフの年収レベルも把握していません。B1の各チームには、大体HC1名、AC2-4名、トレイナー2-4名、アナリスト0-2名、マネージャー1-3名、合計約9-12名スタッフがいます。それより多くのスタッフが在籍しているチームもあります。トップ選手の年俸が1億円と考えると、HCの年俸が800万-1200万と勝手に想定します。ほかのスタッフが平均年収500万と想定したら、各チームスタッフ人件費をこちらに平均5500万で仮想します。(完全に自分の独断ですので、知見があったら是非教えてください)
それで、一試合の勝利で平均約1700万円の選手コストになります。しかし、まだまだです。上記述べった通り、Bリーグでは、A東京のようなお金持ちのチームがあります。19-20シーズンでは、17チームのトップチーム人件費が2億円から6億円までになり、平均3.7億円ですが、A東京だけで9.26億円になっています。つまり、A東京はマーケットに完全な例外です。このような大きな予算を手にしたA東京は、他のチームとは全く異なる論理でマーケットで行動するでしょう。統計学的な観点から、A東京は異常値としてデータから除外されるべきでした。ここでは、A東京を予算3.7億円の仮想チームに置き換えています。
それで、一試合の勝利で平均約1480万円の選手コストになります。
選手が貢献した勝利数はどのように計算するのですか?
選手の実力をどのように評価するのは、バスケ分析にはにおいて最も重要であり、最も難しいテーマでもあります。目的を達成するためには、具体的で豊かな、さまざまな方法がありますが、この話題は今日の焦点ではありません。
ここでは、オールインワンの指標であるBPMを使用しています。BPMとはDaniel Myres作ったAll-in-One メトリクスです。Boxscoreに基づいて選手のオフェンスとディフェンスを評価できます。「選手が出場している時に、100ポゼッションあたり平均レベルの選手より何点のネットポイントをもらう」という意味になっています。
NBAでは、EPM、LEBRON、RAPTORなど、BPMに似ているがより優れたデータモデルがありますが、Bリーグのスタッツ収集レベルを考えると、BPMはすでに最高の指標の一つとなっています。
ここでは、@B_ImpactMetrics さんが算出した19-20シーズンのBPMを使用しており、彼のウェブサイトhttps://bimpactmetrics.com/で全データを見えます。
BPMモデルでは、選手の勝利への貢献度を計算する方法があります。 (類似なモデルであれば、すべてこの方法が使えます。)
ある選手AのBPMが+2であると仮定します。これは文字通り、この選手が100ポゼッションあたり2ネットポイント多くチームの勝利に貢献できることを意味します。しかし、選手Aが出場しなければ、100ポゼッションでチームのネットポイントが2点減るとは断定できません。なぜなら、誰が選手Aの代わりを出場するかにもよるからです。もし、選手Aの代わりにBPMが-2の選手Bを出場すると、100ポゼッションでチームのネットポイントが4点減ります。
19-20シーズンにはBPMが0以上な選手は101名しかいませんが、この101人の選手だけではリーグ戦は成り立たず、残りの180人の選手は当然バスケットボールの面で一般人よりもはるかに優れています。それで、ここではリーグの最低レベルを0以下に設定し、ほとんどの選手の貢献度は、この最低レベルを参考にして計算されることになります。その最低レベルはReplacement Player Levelと呼びます。このレベル以下の選手は、B1リーグで出場するにはふさわしくないと考えられますが、若い選手の育成、ベテラン選手のローカルームでの役割、そしていくつかの商業的な要因により、リーグにはこのレベル以下の選手も存在しています。
ここで、VORP(Value over Replacement Player)という新しい概念を紹介します。 これは、選手の勝利への貢献度であります。
VORP= (BPM - Replacement Player Leve)*Minutes/TeamMinutes
BPMのオリジナルモデルでは、Replacement Player LevelをNBAの選手に基づいた-2に設定していました。 この値は、@B_ImpactMetricsさんのウェブサイトで選手の勝利貢献度を計算する際にも使用しています。 しかし、Bリーグには日本人選手よりも格段に優れた外国人選手が多数在籍しており、バスケットボールが発展途上の国であり、プロとして活躍できる優秀な選手が少ないことから、リーグ内の選手の強さと弱さの格差がNBAよりも大きく、この値はBリーグでは-4にすべきだというのが私の見解です。
VORPの計算には、選手の出時間も関わってくるので、わかりやすいですね。 出場しない選手はチームの勝利に貢献できません。プラスの影響を与える選手は、出場時間が多いほど貢献度が高くなります。
VORPを年俸に換算する方法は?
望む結果に近づいていますが、まだまだ細かい作業が必要です。
19-20シーズンには、281名選手のVORPを加算したら、約362になります。それと365の勝利数と近います。少し調整すると、VORPの1点あたり、1491万円相当になります。
年俸価値 = VORP*1491万円
では、結果を見ましょ。
2019-20シーズンB1年俸価値TOP20(外国人/帰化)
2019-20シーズンB1年俸価値TOP20(日本人)
但し、まだ一つの問題があります。上記述べった通り、一部の選手のBPMはReplacement Player Levelより低いです。それでVORPもマイナスになります。そう計算すると、マイナスの年俸になるじゃないですか。それは当然おかしくなります。
Bリーグの規約により、最低年俸は300万円です。つまり、計算年俸価値が300万円より低くでも、300万円にすべきです。それらの選手の年俸価値をすべて300万円にして、残りの分をVORPにより分配します。
調整後2019-20シーズンB1年俸価値TOP20(外国人/帰化)
調整後2019-20シーズンB1年俸価値TOP20(日本人)
このやり方で、何の欠点があるか?
選手の試合スタッツで年俸を算出するのは、当然に「その選手をその金額で契約しよう」ということを思い出しますが、GMに対して、そうな簡単なことではありません。その方法はいくつの欠点があります。
1.BPMの妥当性
BPMはBリーグ今時点の条件と言えばいい指標と思いますが、完璧なものではありません。正確性を数字的にと言えば、OBPMが約70%で、DBPMは30%-40%であると思います。ディフェンス側があまり信頼できません。
まだ、すべてのPMモデルが「その選手が今の役割を担当すれば、どうなパフォーマンスを出せる」ということを示しています。もし、チームが変更して、役割が変更したら、そのBPMが適用しない場合がかなりあります。
2.情報不足
今の計算は、2020年年末にBリーグ公表した19-20シーズンの決算概要で19-20シーズンの年俸価値を推定しています。Bリーグはすごく速く発展しているリーグですので、毎年大きく違いがあります。2019年の情報で、2021年の投資規模を正確に予想することが難しい。
当然、スタッフ人件費の部分も、完全に私自身が根拠不足な推測ですので、その部分が事実と離れる可能性が高いです。
3.将来の観点
チームが選手と契約する時、将来の活躍のため給料を支払います。過去のパフォーマンスは当然に参考しますが、決定的なことではありません。特に、若い選手の場合は、将来性をよく期待しています。
例えば、19-20シーズンの岡田選手はBPMが-5.24になりました。それで計算すれば、300万円の最低年俸になります。しかし、約二年後の現在は、Bリーグ日本人得点王になります。もし2020年の夏にこうな岡田選手と契約すれば、どうな年俸が出せばほうがいいか?300万円なら馬鹿にさせるだろう(笑
4.試合以外の価値
確かに、プロバスケチームは試合を商品としてファンの皆様に売れていますが、試合の価値は勝利だけではありません。その勝利を追いかけている間に、どうな物語があろうか?それも商品の価値を上げる要件だと思います。もし、ある選手はそいう価値が提供できれば、年俸にも反映させるでしょう。
こんなに長いバスケの記事を日本語で書いたのは初めてで、読みやすさも最悪だかもしれませんので、もしここまでを読んだ方がいったら、心より感謝します。
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